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ウイスキー陸&クロナキルティ|飲みやすくて優しい味・香りをレビュー

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ハイボール娘
ハイボール娘

今回は、「キリンウイスキー 陸」と「クロナキルティ」の魅力を徹底比較。それぞれの背景にある物語や製造哲学の違いから生まれる、独特の味わい、そしてハイボールとの相性という個性を分かりやすく解説します。

■ウイスキー陸

ウイスキー陸は、単に安いウイスキーではありません。日本ウイスキー愛好家の日常に寄り添い、最高の満足度を提供するために、緻密な設計思想のもとに生まれた「王道の巨人」のような存在です。

①歴史

ウイスキー「陸」は、2019年に惜しまれつつ終売となった伝説的な銘柄「富士山麓 樽熟原酒50°」の魂を受け継ぐ後継者として開発されました。その故郷は、ウイスキーの聖地スコットランドを思わせる冷涼な気候のキリン富士御殿場蒸溜所。そして「陸」の味わいの根幹をなすのが、富士山の雪や雨が約50年もの歳月をかけて溶岩層で磨かれた、清らかな伏流水です。この恵まれた水こそが、「陸」のきれいな味、美しい香りを生み出す源泉となっているのです。

②製法

ウイスキー「陸」の美味さの秘密は、二つの技術的こだわりにあります。一つは、ハイボールにしても味わいの骨格が崩れない、アルコール度数50%という力強さ。もう一つが、冷却ろ過をしない「ノンチルフィルタード」製法です。あえてろ過を省くことでウイスキー本来の豊かな旨味成分を最大限に閉じ込め、リッチなコクを実現しました。そのため、低温で白く濁ることがありますが、それは「品質の証」なのです。この二つのこだわりが、「陸」ならではの飲みごたえと複雑な味わいを生み出しています。

③香り・味わい

香り
グラスに注ぐと、オレンジや黄桃、リンゴのコンポートを思わせる甘く華やかな香りが立ち上ります。奥にはハチミツやバニラのような芳醇さも感じられ、非常にアロマティックです。

味わい
口当たりは澄んでいながら、50%のアルコール度数に由来する「ズシッ」とした重みと、しっかりとしたボディ、そして柔らかな甘みが広がります。樽由来の心地よい渋みと、ほのかなスパイシーさが味わいに奥行きを与えています。フルーティーで深みのある熟成香が心地よく続きますが、後味は意外にも爽やかでキレが良いのが特徴です。

■ウイスキー陸 ハイボール黄金比

「陸」は、ハイボールのために生まれてきたと言っても過言ではありません。その50%というアルコール度数が、炭酸水と氷に決して屈しない、力強い味わいの基盤を築いています。

①キリン公式の推奨比率

キリンが公式に推奨しているのは、「陸」1に対して炭酸水5という比率です 。この比率のポイントは、レモンを加えないこと。ウイスキー本来の甘く華やかな香りを活かし、非常にすっきりとして爽快な、食事の邪魔をしない最高の食中酒が完成します。

②おすすめアレンジ

一方で、ウイスキーの味わいをより強く感じたいというファンの間では、「陸」1に対して炭酸水3という、やや濃いめの比率が支持されています。この比率にすると、バニラやキャラメルのような甘い風味が前面に現れ、一杯で満足感のある、飲みごたえ抜群のハイボールになります。

③ハイボールの作り方

  1. グラスを氷で満たし、マドラーで素早くかき混ぜてグラス自体をキンキンに冷やします。この時溶けた水は、必ず捨ててください。
  2. 「陸」を適量(例:30ml)注ぎ、ウイスキーが冷えるまで再度軽くステアします。
  3. よく冷えた強炭酸水を、氷に当てないようにグラスの縁に沿って静かに注ぎ入れます(例:1:3なら90ml、1:5なら150ml)。
  4. 炭酸が抜けないよう、マドラーをグラスの底まで一度差し込み、氷をそっと持ち上げるように一度だけ混ぜれば完成です。

 

■クロナキルティ

「陸」が日本の巨大資本が生んだ「王道の巨人」ならば、「クロナキルティ」はアイルランドの片田舎で生まれた「物語を纏う革新者」です。その魅力は、ウイスキーの味わいだけでなく、その背景にある豊かなストーリーに深く根差しています。

①歴史

クロナキルティ蒸留所は、2018年にアイルランド南西部の港町、クロナキルティに設立された非常に新しい蒸留所です。その設立者であるスカリー家は、この地で9世代にわたって農業を営んできた家系であり、その哲学は「ファーム・トゥ・グラス(農場からグラスまで)」という言葉に集約されています。彼らはウイスキーの原料となる大麦を、自らの農場で栽培しているのです。これは、原材料の品質を根底からコントロールし、土地の個性を最大限にウイスキーに反映させたいという、強い意志の表れです。

②製法

クロナキルティの個性を決定づけるのは、その土地と製法へのこだわりにあります。まず、大西洋の崖の上にある熟成庫で潮風を浴びながら熟成させることで、ウイスキーにほのかな塩味とミネラル感という「海のテロワール」が生まれます。製法では、アイリッシュ伝統の「3回蒸留」により、雑味のない非常にスムースな口当たりを実現。これが初心者にも親しみやすい味わいの土台となっています。

そして真骨頂は、世界初の試みである革新的な樽熟成です。バーボン樽で熟成させた後、ボルドー産赤ワイン樽を削ってから再度トーストした「NEOC樽」で仕上げることで、複雑なフルーツ感とスパイシーさを獲得しています。その卓越した品質は、熟成前の原酒が世界的な賞を複数回受賞していることからも証明済みです。

③香り・味わい

香り
青リンゴや洋ナシのような爽やかで明るい果実香が支配的 。その奥に、クローバーハニーやレモンゼスト、そしてバニラの甘い香りが繊細に重なります。

味わい
アイリッシュらしい非常にスムーズでシルキーな口当たり 。ポーチドペア(洋梨のコンポート)やバターの効いたタフィーのような優しい甘みと、アーモンドのようなナッティな香ばしさ、そして奥から現れるジンジャーや白胡椒のような心地よいスパイス感が、見事なバランスで調和しています。中程度からやや長めの余韻。プラリネやトフィーのような甘やかさと、樽由来のスパイス感が心地よく続きます 。全体として、非常にバランスが良く、優雅で親しみやすい印象を与えます。

■クロナキルティ ハイボール黄金比

クロナキルティは非常に繊細なウイスキーであり、そのハイボール作りには少しの工夫と敬意が必要です。ローソン限定で発売されたハイボール缶に対して、一部から「水っぽい」「個性が弱い」という厳しい評価が見られたのは、そのデリケートな香味を活かすには、より丁寧なアプローチが求められることの証左です 。

①専門家の推奨比率

クロナキルティの持つ青リンゴやフローラルな香りを損なわず、かつ水っぽくならない絶妙なバランスとして、「クロナキルティ」1に対して炭酸水3.5の比率を推奨します。これは、様々なレビューを統合し、そのデリケートな特性を最大限に引き出すための専門的な提案です。

②おすすめアレンジ

レモンの強い酸味は、クロナキルティの繊細な香りを覆い隠してしまいます。代わりに、グレープフルーツやオレンジのピール(皮)を軽く搾り、その柑橘オイルの香りを添えることを強く推奨します。これにより、ウイスキーが持つフルーティーな側面が強調され、より華やかで立体的な味わいが生まれます。

③ハイボールの作り方

  1. グラスを氷で満たし、マドラーで素早くかき混ぜてグラス自体をキンキンに冷やします。この時溶けた水は、必ず捨ててください。
  2. 「陸」を適量(例:30ml)注ぎ、ウイスキーが冷えるまで再度軽くステアします。
  3. よく冷えた強炭酸水を、氷に当てないようにグラスの縁に沿って静かに注ぎ入れます(例:1:3なら90ml、1:5なら150ml)。
  4. 炭酸が抜けないよう、マドラーをグラスの底まで一度差し込み、氷をそっと持ち上げるように一度だけ混ぜれば完成です。

作り方の基本は「陸」と同じですが、特に炭酸を注ぐ工程と最後のステアは、より優しく、香りを閉じ込めるように意識することが重要です 。ガーニッシュを加えるタイミングは、最後の一混ぜの後が最適。グラスの上にピールを搾り、香りのヴェールをまとわせるように仕上げてください。

■まとめ

特徴キリンウイスキー 陸クロナキルティ (ダブルオーク)
タイプブレンデッドウイスキーブレンデッドウイスキー
生産国日本アイルランド
価格帯 約2,100円約6,000円~
アルコール度数50%43.6%
キーフレーバーオレンジ、バニラ、甘い樽香青リンゴ、スパイス、ハチミツ
ハイボール適性非常に高い(誰でも美味しく作れる)高い(繊細な作り方が必要)
おすすめの人物像毎日のハイボールを心ゆくまで楽しみたい方
コストパフォーマンスを最優先する方
力強く飲みごたえのある味わいが好きな方
新しいウイスキーとの出会いを求める方
クラフトマンシップやストーリーを重視する方
繊細で複雑な味わいが好きな方

今回は、日本のキリンウイスキー陸と、アイルランドのクロナキルティという、二つの対照的なウイスキーをご紹介しました。力強い味わいと圧倒的なコストパフォーマンスで日々の晩酌に「確かな満足」を約束する陸。 潮風が育んだ繊細な香りと革新的な樽熟成が生み出す、複雑で心躍る体験を提供するクロナキルティ。

ハイボール娘
ハイボール娘

どちらが優れているかではなく、あなたの気分とシチュエーションが、その日の主役を選びます。この二本があなたの棚に並んでいることこそ、どんな時も最高の選択ができる、家飲みにおける真の贅沢なのかもしれません。

 

今後も、「美味しいハイボール」が飲めるような作り方やアレンジ方法などの記事を投稿していくので、いつもの家飲みを「ちょっと特別」にしてみたい方はぜひ見てね!

 

■よくあるご質問

Q1:ウイスキー初心者です。どちらから試すのがおすすめですか?

A1:味わいの親しみやすさで言えば「クロナキルティ」がおすすめです。3回蒸留によるスムースで優しい口当たりは、ウイスキーを飲み慣れていない方でもすんなりと楽しめるでしょう。一方、しっかりとしたウイスキーの飲みごたえをハイボールで体験したいなら、キレの良い「陸」も素晴らしい選択です。

Q2:ハイボールで飲むのがメインです。陸の方がハイボール向きですか?

A2:「陸」はハイボールで飲むことを前提に設計されているため、誰が作っても味がブレにくく、非常に美味しく仕上がります。一方「クロナキルティ」は繊細な香味を持つため、丁寧に作らないと魅力が半減してしまう可能性があります。手軽さと安定感を求めるなら「陸」、繊細な香りをじっくり楽しむなら「クロナキルティ」が向いています。

Q3:クロナキルティは陸に比べてかなり高価ですが、その価値はありますか?

A3:価値の尺度が異なります。「陸」は日々の晩酌のための最高のコストパフォーマンスを追求したウイスキーです。一方「クロナキルティ」の価格には、自社栽培の大麦や世界初の樽熟成への挑戦といった「物語」や「体験」への価値が含まれています。特別な時間に飲む一本としては、その価値は十分にあると言えるでしょう。

Q4:記事にある「陸」のノンチルフィルタード製法で白く濁ることがある、というのは大丈夫なんですか?

A4:はい、全く問題ありません。それは品質の劣化ではなく、むしろウイスキー本来の旨味成分が豊富に含まれている「品質の証」です。ボトルを手のひらで少し温めたり、室温に置いておけば自然と元に戻りますので、安心してお楽しみください。

Q5:ローソン限定のクロナキルティのハイボール缶が「水っぽい」という評価もあるようですが、家で作れば美味しくなりますか?

A5:はい、その可能性は非常に高いです。クロナキルティは繊細なウイスキーなので、一般的な缶ハイボールの比率では個性が弱く感じられることがあります。記事で推奨しているように、ウイスキー1:炭酸水3.5くらいの少し濃いめの比率で、オレンジやグレープフルーツの皮で香り付けをすれば、その華やかで複雑な味わいを最大限に引き出せますよ。