知多ハイボールがまずいのは作り方のせい?格段に美味しくなる飲み方


ハイボール娘
今回は、サントリーウイスキー「知多」の魅力を最大限に引き出すハイボールの作り方から、知多を愛する者が次に探求すべきウイスキーまでご紹介します!
■知多の製造に隠された3つの秘密
サントリー「知多」は、愛知県の知多蒸溜所で造られる「シングルグレーンウイスキー」です。これは山崎(シングルモルト)や響(ブレンデッド)とは異なるカテゴリーに分類されます。伝統的に、グレーンウイスキーはトウモロコシを主原料に連続式蒸溜機で造られるため、軽やかで穏やかな酒質から、ブレンデッドウイスキーの「脇役」とされてきました。サントリーはその常識を覆し、あえてグレーンウイスキーを主役に抜擢。長年培った多彩な原酒づくりの技術を結集し、単に軽いだけでなく、複雑で奥行きのある繊細な味わいを実現したのが「知多」なのです。
①味わいの作られ方
主原料は、ほのかな甘みをもたらすトウモロコシです。これに、デンプンを糖に変えるための酵素源として少量の大麦麦芽、そして木曽川水系の清らかな水を加えて「もろみ」が造られます。このもろみを蒸溜するのが、知多の個性を決定づける「連続式蒸溜機」です。内部が多段構造になったこの蒸溜機は、非常に純度の高いアルコールを効率的に精製でき、雑味の少ないクリアな酒質を生み出します。
これが「知多」の軽やかさの土台です。さらに、蒸溜機の一部に使われている銅が、不要な成分を除去し、より一層クリーンな味わいを実現しています。このように、原料の特性と独自の蒸溜技術が組み合わさることで、「知多」特有の軽やかでクリーンな味わいが形作られているのです。
②3種のグレーン原酒
「知多」が世界で評価される本当の理由は、そのユニークな製造法にあります。知多蒸溜所では、同じ原料と連続式蒸溜機を使いながら、その運転方法を巧みに変えることで、性格の異なる3タイプのグレーン原酒を造り分けているのです。この多様な原酒が、ブレンドされることで、「知多」ならではの軽やかさの中に、複雑で奥行きのある香味を生み出す「三本の柱」となっています。
| 蒸溜プロセス | 香味プロファイル | 最終ブレンドにおける役割 | |
| クリーン | 4つの蒸溜塔すべてを駆使し、 最大限の精製を行う | ピュアでクリーン ほのかな甘さを持ち極めて雑味がない | 「風香る」と表現される、 軽やかで澄み切った味わいのバックボーンを形成する。 |
| ミディアム | 3つの蒸溜塔を使用する | 口当たりがマイルド 穀物由来の旨みを適度に残している | 全体にボディ(厚み)と滑らかな口当たりを与え、 クリーンとヘビーを繋ぐ橋渡し役を担う。 |
| ヘビー | 2つの蒸溜塔のみを使用し、 精製度を抑える | 穀物様の香りが力強く、味わい豊か。 出汁のような旨みも感じられる | 味わいの土台となる深み、複雑さ、 そして確かな熟成感と長い余韻をもたらす。 |
この「原酒の造り分け」こそが、サントリーの真骨頂です。単一の軽やかなスピリッツを造るのではなく、あえて性格の異なる複数のスピリッツを造り出す。この多様な原酒のパレットを持つことで、ブレンダーは軽やかさを基調としながらも、決して単調ではない、深みと複雑さを兼ね備えたウイスキーを創造することが可能になります。
③樽と匠の技が織りなす調和
蒸溜したてのスピリッツは樽熟成を経てウイスキーとなります。「知多」の彩り豊かな香味は、この熟成工程から生まれます。個性が穏やかなグレーンウイスキーは樽の個性を素直に映すため、知多ではホワイトオーク樽、スパニッシュオーク樽、ワイン樽など多彩な樽を使い分け、多様な香味を原酒に与えます。
さらに、造り分けられた3タイプの原酒と樽の組み合わせで生まれる約10種もの原酒を、ブレンダーが匠の技でブレンド。この複雑な工程を経て、「知多」ならではの軽やかさの中に複雑さと奥行きを併せ持った味わいが完成するのです。
ホワイトオーク樽
バニラのような甘い香味をもたらす、ウイスキー熟成の王道。
スパニッシュオーク樽
甘くフルーティーで、濃厚かつ複雑な味わいを付与する。
ワイン樽
苺のように甘い香りと、滑らかな口当たりを生み出す。
■知多の味わい・おすすめの飲み方
①香り・味わい
「知多」は“風のように軽やかで、ほのかに甘い”味わいが真骨頂です。グラスに注ぐと、柚子やミントのような和のハーブを思わせる爽やかな香りに、蜂蜜や和三盆のような上品で優しい甘さが重なります。口に含むと、どこまでも滑らかでクリーン。穀物由来の甘みがすっと広がり、心地よいキレとともに消えていきます。その主張しすぎない穏やかな香味は、まさに「サイレント・スピリッツ(静かなる蒸溜酒)」と称されるにふさわしい品格を備えています。
②おすすめの飲み方
風香るハイボール(基本の楽しみ方)
「知多」の軽やかさを最も楽しめる代表的な飲み方。きりっと冷えたソーダで割ることで、風のような爽やかさと、ほのかな甘みが際立ちます。お好みでスライスしたすだちや柚子を軽く搾れば、和の香りが華を添え、一層風味豊かになります。
水割り(食中酒として)
和食などの繊細な料理と合わせるなら水割りがおすすめです。「知多」の持つクリーンで穏やかな味わいが、料理の邪魔をせず、互いの風味を引き立て合います。良質な天然水で、好みの濃さに調整してお楽しみください。
オン・ザ・ロック(じっくりと味わう)
大きめの氷を入れたグラスに注ぎ、ゆっくりと時間をかけて味わうスタイル。氷が溶けるにつれてアルコールの角がとれ、隠れていた甘みや香りが徐々に開いていく変化を楽しめます。
お湯割り(寒い季節に)
寒い季節には、お湯で割るのもおすすめです。「知多」の持つ穀物の甘みがふっくらと花開き、心も体も温まる優しい一杯になります。立ち上る香りとともに、リラックスした時間をお過ごしください。
③こんな人におすすめ
穏やかで繊細な香味を好む方。特にハイボールでウイスキーを楽しみたい方には最適です。「知多」の持つ軽やかさはソーダで割ることで一層際立ち、「風香るハイボール」としてその真価を存分に発揮します。また、和食との相性も抜群で、食事の味わいを引き立てる食中酒としてもおすすめです。
■まとめ
サントリーウイスキー「知多」の奥深い世界、いかがでしたでしょうか。その風のように軽やかな一杯の裏には、従来の「脇役」であったグレーンウイスキーの可能性を信じ、技術の粋を尽くしたサントリーの挑戦の物語があります。性格の異なる3種の原酒を造り分けるという緻密な設計、多彩な樽が織りなす豊かな香味、そして匠の技による絶妙な調和。これら全てが融合して初めて、「知多」ならではの“軽やかさと複雑さ”が生まれるのです。

ハイボール娘
ぜひ、こだわりの一杯のハイボールでその真価を確かめ、時には水割りやロックでその繊細な表情の違いを楽しんでみてください。
今後も、「美味しいハイボール」が飲めるような作り方やアレンジ方法などの記事を投稿していくので、いつもの家飲みを「ちょっと特別」にしてみたい方はぜひ見てね!
■よくあるご質問
Q1:「知多」はシングルグレーンウイスキーなのに、なぜ原材料に「モルト」と記載されているのですか?
A1:主原料のトウモロコシのデンプンを糖に変える「糖化」のために、酵素源として少量の大麦麦芽(モルト)が使われます。香味のためではなく製造に不可欠な役割のため、分類はシングルグレーンとなります。
Q2:「知多」は、同じサントリーの「山崎」や「白州」とどう違うのですか?
A2:主原料と蒸溜方法が異なります。「知多」はトウモロコシを主原料とする軽やかなグレーンウイスキー。一方「山崎」「白州」は大麦麦芽のみを原料とする、個性の豊かなシングルモルトウイスキーです。
Q3:「知多」は終売になったり、手に入りにくくなったりしているのですか?
A3:いいえ、700mlボトルは終売ではなく定番商品です。スーパー等で安定して供給されており、比較的入手しやすい銘柄です。過去の価格改定や限定品の情報から、品薄や終売の噂が出ることがあります。
Q4:知多蒸溜所を見学することはできますか?
A4:残念ながら知多蒸溜所は、山崎や白州蒸溜所と異なり、原酒製造に特化した工場です。そのため、一般向けの工場見学ツアーや、併設のショップでのウイスキー販売などは一切行っていません。
Q5:ハイボール以外で「知多」を楽しむ、おすすめの飲み方はありますか?
A5:オン・ザ・ロックは甘みが引き立ち、味わいの変化を楽しめます。また、ウイスキーと常温の水を1対1で割る「トワイスアップ」は、本来の甘くクリーミーな香りが開き、香りをじっくり楽しみたい方におすすめです。

